鳩を勝手に「駆除」できない理由
各ページの §10 で触れている内容を、もう少し詳しくまとめました。 結論だけ先に書くと、追い払うのは自由、捕まえるのと卵・ヒナのいる巣に手を出すのは許可が要る、です。
1. どの法律が関係するのか
街で見かける鳩のほとんどはドバト(カワラバト)です。もとは飼い鳥だった個体が野生化したもので、 いまは野生の鳥として鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)の対象になります。 「もともと人が飼っていた鳥だから」という理由で例外にはなりません。
ドバトは狩猟してよい鳥(狩猟鳥獣)には含まれていません。 つまり狩猟免許を持っていても、狩猟としては捕獲できない鳥です。 被害があって捕獲する場合は、狩猟とは別の「有害鳥獣捕獲」などの許可を取ることになります。
2. できること・できないこと
○ 許可なしでできること
- 音・光・人の動きで追い払う
- ネット・剣山・ワイヤーで「とまらせない」「入らせない」
- フンの清掃と消毒
- 空の巣(卵もヒナもいない)を片づける
- 巣を作られる前に、すき間や暗がりをふさぐ
× 許可なくできないこと
- 捕まえる・傷つける・殺す
- 卵を取り除く・処分する
- ヒナを取り除く
- 卵やヒナのいる巣を撤去する
「空になってから」がいちばん早い
卵やヒナがいる巣は、許可を取るか、巣立ちを待つかのどちらかになります。 調べたかぎりでは、多くの自治体が「巣立ちまで見守り、いなくなったのを確認してから撤去してください」と案内していました。 許可の手続きより待つほうが早いことが多いためです。
逆に言えば、巣ができる前・卵が産まれる前に手を打てば、法律の話は出てきません。 「巣材を運んでいる」段階が、自分で動ける最後のタイミングです。
3. 捕獲の許可はどこに出すのか
許可を出すのは都道府県知事ですが、ドバトのような身近な鳥は 市区町村に権限が下りていることが多いです。実際、調べた市の多くが 「捕獲許可の申請は市の担当課へ」と案内していました。 窓口の名前は自治体によってまちまちで、環境担当のこともあれば、 農林部門の鳥獣対策担当のこともあります。
お住まいの市区町村のページに、確認できた窓口の名前を載せています。 全国の市区町村から探すか、各ページの 「この地域の相談窓口」をご覧ください。
4. 餌やりを禁じる条例は、ほとんどありません
「近所の人が餌をやるせいで鳩が集まる。条例で禁止されていないのか」というご相談はよくあります。 このサイトでは47道都府県・1,912市区町村について、 各自治体の公式サイトを1件ずつ当たって条例の有無を調べました。その結果がこれです。
紛らわしい条例が各地にあります
条例名だけ見ると効きそうなのに、鳩には適用されないものを実際に見つけました。
- 動物愛護条例(東京都・北九州市・札幌市・愛媛県・岩手県・秋田県など)── 飼い主の遵守事項で、野生の鳩は対象外
- 和歌山県の動物愛護条例 ── 飼い主以外の給餌も規制し過料まであるが、対象は猫のみ
- 北海道の「指定餌付け行為」 ── 餌付け禁止の制度はあるが、指定されているのはヒグマだけ
- 滋賀県の野生動植物共生条例 ── 「何人も…飲食物を与えてはならない」と定め罰則もあるが、 対象は知事が指定した指定野生鳥獣種に限られ、鳩の指定は確認できませんでした
- 鳥獣被害対策の条例(山形県・茨城県)── 対象はクマ・イノシシ・カワウ・サル・ハクビシンなど。 鳩は対象鳥獣に入っておらず、餌やりを禁じる規定もありません
- 京都府鴨川条例 ── 実在するが、禁止対象はバーベキュー・打上花火・自転車放置・車両乗入・落書き
- 各地の美化条例・ふん害防止条例 ── ほぼすべて飼い犬のふんが対象
条例名で判断せず、条文の対象を確かめてください。各市区町村のページには、 調べた結果と出典リンクをそのまま載せています。
5. 餌やりで困っているときの手がかり
禁じる条例が無くても、打つ手がないわけではありません。
- 動物愛護管理法 第25条。動物の飼養・保管だけでなく給餌・給水が原因で 周辺の生活環境が損なわれている事態も、都道府県知事等による指導・助言や勧告、命令の対象と定められています (令和元年の法改正で給餌・給水が追加されました)。命令に従わない場合は罰則の対象になる場合があります。
- 民事の問題として扱われることがあります。継続的な餌やりで実害が出ている場合、 当事者間の話し合いや調停の対象になり得ます。
- 集合住宅なら管理規約。ベランダでの給餌を禁じている規約は珍しくありません。 管理会社・管理組合に相談するのが早いことがあります。
6. 迷ったら
卵やヒナがいる、手が届かない高さにある、フンが積もっている ── このどれかに当てはまるなら、無理をせず専門業者に見てもらうのが確実です。 法令にもとづく手続きが必要な場面では、慣れている業者のほうが早く片づきます。
出典:環境省「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」/環境省「令和元年に行われた動物愛護管理法改正の内容」/各自治体の公式サイト(各市区町村ページに個別の出典を掲載)